鹽竈神社|和歌山県・和歌の浦の岩窟に鎮座する安産祈願の社
鹽竈神社
和歌山市和歌浦に鎮座する鹽竈神社(しおがまじんじゃ)は、国の名勝「和歌の浦」に建つ玉津島神社のほど近く、不老橋の前の岩穴に社が収まる神秘的な古社です。かつて「輿の窟(こしのいわや)」と呼ばれた岩穴に鎮座し、もとは玉津島社の祓所で、大正6年(1917年)に神社となりました。安産守護・子授けをはじめ、不老長寿・漁業豊穣・航海安全の神として古くから信仰を集めてきました。御祭神は鹽槌翁尊(しおづちのおじのみこと)と祓戸大神四座。鹽槌翁尊は古事記の「海幸彦・山幸彦」の神話で、釣り針を失くした山幸彦を海神のもとへ送り出した神で、山幸彦と結ばれた豊玉姫が安産で御子を授かったことにちなみ、安産の神として親しまれています(例祭日は9月16日)。万葉集にも詠まれた景勝地・和歌の浦にありながら、訪れる人は多くない穴場の聖地です。
見どころ
- 岩窟にすっぽりと収まるように鎮座する、神秘的な社のたたずまい
- 安産・子授けを願う人々が絵馬やお守りを求めて訪れる、静かな信仰の場
- 目の前に広がる和歌の浦の干潟と、玉津島・妹背山などの景色
- すぐ近くにある玉津島神社や、風光明媚な不老橋とあわせての参拝
- 社の南側の小高い丘に立つ、山部赤人の歌碑
- 「浜降りの神事」で神輿がまず清め祓いを受けたと伝わる、祓いの場としての歴史
- 万葉のむかしから歌に詠まれてきた、和歌の浦の風情
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「しおがまさん」と塩づくりの物語
地元では親しみを込めて「しおがまさん」と呼ばれてきた神社です。御祭神の鹽槌翁尊は、塩が人々の食生活にとって欠かせないものであることを説き、各地を巡って製塩の業を伝えた神とされています。その数は全国で13か所に及び、和歌の浦の鹽竃はそのうちの9か所目にあたると伝えられます。ちなみに13か所目が奥州一の宮として名高い鹽竈で、この地で尊が亡くなったことから「果ての鹽竈」と呼ばれるそうです。伝承のとおり、布引付近を含めた当地では古くから製塩が盛んに行われ、それは大正の後期まで続きました。潮の満ち引きが出産に深く関わり、潮の功徳によって人が生まれるという古来の考え方も、この社が安産・子授けの信仰を集めてきた理由のひとつです。
浄瑠璃「三十三間堂棟木の由来」の木遣音頭には、「和歌の浦には名所がござる 一に權現、二に玉津島、三に下がり松、四に鹽竃よ」とうたわれています。小さな社ながら、鹽竈が古くから和歌の浦を代表する名所のひとつに数えられていたことがうかがえる一節です。
祓いの場としての歴史と赤人の歌碑
もともとこの岩穴は、玉津島社の祓(はら)い所でした。かつて、かつらぎ町天野に鎮まる天野丹生明神(現在の丹生都比賣神社)の神輿が玉津島社へ渡御する「浜降りの神事」が行われており、神輿はまずこの輿の窟に渡って清め祓いを受け、翌日に玉津島社へと向かったと伝えられています。あわせて祀られる祓戸大神四座は、瀬織津比売神・速開都比売神・速佐須良比売神・気吹戸主神の四柱で、大祓詞にもあるとおりすべての罪穢れを祓い清める神として知られます。神代のむかしから、この岩穴が特別な霊験の地とされてきたことが伝わってきます。
社に並んで南側の小高い丘の上には、山部宿祢赤人の歌碑が立っています。神亀元年、聖武天皇の玉津島行幸にお供として参加した赤人が詠んだとされる「和歌の浦に 潮みち来れば潟を無み あしべをさして 鶴鳴きわたる」の一首が刻まれ、干潟に鶴が舞い降りていたころの和歌の浦ののどかなたたずまいを今に伝えています。目の前の干潟を眺めながらこの歌を口ずさむと、千年以上前の景色が目の前の風景に重なって見えてきます。現在も京阪神を含む県内外から、安産・子授けの祈願や、願いがかなったお礼参りに訪れる人が絶えません。
季節の楽しみ方
春は和歌の浦一帯がやわらかな陽光に包まれ、夏は青い海と干潟のコントラストが美しく映えます。秋から冬は澄んだ空気の中で静かに参拝でき、潮の満ち引きによって表情を変える干潟の風景も見どころです。夕暮れどきは和歌の浦が茜色に染まり、万葉歌人が愛した景色の面影を感じられます。
アクセス・基本情報
- 所在地:和歌山県和歌山市和歌浦中3-4-26(玉津島神社と同じ)
- アクセス:JR和歌山駅または南海和歌山市駅から和歌山バス新和歌浦行きに乗車し「玉津島神社前」または「不老橋」下車すぐ。紀三井寺駅からは西口を出て徒歩約25分。車は大阪方面から阪和自動車道・和歌山ICを出て和歌浦方面へ約25分、白浜方面からは海南ICから約20分で、玉津島神社前の駐車場を利用します
- 玉津島神社と同じ和歌の浦の一帯にあり、周辺は徒歩で巡れる
- 岩窟内は足元が滑りやすいので注意。無理に奥へ入り込まない
- 参拝自由。授与品は玉津島神社側で扱う場合があるため、あわせての参拝を
旅の実用メモ
- 社は玉津島神社のすぐそばにあり、両社と不老橋・妹背山を含めて30分〜1時間ほどで巡れます。散策向きの歩きやすい靴がおすすめです。
- 周辺には和歌の浦の眺めを楽しめる遊歩道や休憩所があり、干潮時は干潟に降りて景色を楽しめます。潮見表を確認しておくと安心です。
- 和歌山市街から近く、和歌山城や紀三井寺とあわせた市内観光に組み込みやすい立地です。
- 岩窟前は空間が限られるため、混雑時は譲り合っての参拝を。写真撮影も他の参拝者への配慮を忘れずに。
- 海辺で日差しや潮風が強い日もあります。夏場は帽子や飲み物を用意すると快適です。
あわせて訪ねたい玉津島神社
鹽竈神社は玉津島神社と同じ和歌浦中3-4-26に所在し、御祈祷や授与も玉津島神社が受け付けています。玉津島神社の御祭神は、稚日女尊(わかひるめのみこと)・息長足姫尊(神功皇后)・衣通姫尊(そとおりひめのみこと)・明光浦霊(あかのうらのみたま)の四座。なかでも衣通姫尊は和歌の神として知られ、住吉大神・柿本大神とならぶ「和歌三神」の一柱として、朝廷から文人墨客まで幅広く崇敬されてきました。例祭日は4月13日です。神功皇后が卯の年・卯の月にちなんで合祀されたという故事から、神紋や授与品にはかわいらしいうさぎの姿を見つけることができ、鹽竈神社への参拝とあわせて授与所をのぞく楽しみもあります。
社の背後にそびえる小高い岩山は、奠供山(てんぐやま)。標高33メートルの小さな山ですが、聖武天皇はここに登って海の眺めに感動し、「弱浜」の名を「明光浦」と改め、この景色が荒れることのないよう末永く守れという詔を発したと伝えられます。和歌の浦が名勝として大切に守られてきた原点が、この山の上にあるわけです。鹽竈神社の岩窟に手を合わせたあと、玉津島神社から奠供山を仰ぎ見ると、和歌の浦という土地の奥行きが一段と感じられます。
ひとことアドバイス
玉津島神社とセットで巡るのがおすすめです。岩窟に収まる社は写真映えもしますが、安産を願う信仰の場として静かに手を合わせてください。和歌の浦の干潟や夕景とあわせて、万葉のむかしに思いを馳せながらゆっくり過ごすと、この地の魅力がいっそう深まります。
📚 情報の参照元
この記事は、玉津島神社・鹽竈神社の公式サイトが公表する由緒やアクセスの案内、和歌山市や和歌山市観光協会が発信する情報、和歌の浦一帯の遊歩道や不老橋・妹背山の現地案内表示をもとにまとめています。和歌の浦は万葉集にゆかりの深い景勝地として知られます。授与品の取り扱いや潮見表、参拝に関する情報などは変更される場合があるので、お出かけ前に神社や観光協会の公式情報でご確認ください。
参拝・観光のチェックリスト
- 所要時間の目安: 玉津島神社・不老橋・妹背山を含めて30分〜1時間ほどで巡れます
- 持ち物・準備: 散策向きの歩きやすい靴がおすすめ。岩窟内は足元が滑りやすいので注意を
- まわり方の目安: 干潮時は干潟に降りて景色を楽しめるので、潮見表を確認しておくと安心です
- マナーの目安: 岩窟前は空間が限られるため、混雑時は譲り合って参拝しましょう
- 周遊のヒント: 和歌山城や紀三井寺とあわせた市内観光に組み込みやすい立地です
訪問の実用情報
- 所在地:和歌山県和歌山市和歌浦中3-4-26(玉津島神社と同じ)
- 御祭神:鹽槌翁尊、祓戸大神四座
- 例祭日:9月16日
- アクセス:JR和歌山駅・南海和歌山市駅から和歌山バス新和歌浦行きで「玉津島神社前」または「不老橋」下車すぐ/紀三井寺駅西口から徒歩約25分/阪和自動車道 和歌山ICから約25分、海南ICから約20分
- 駐車場:玉津島神社前の駐車場を利用
- 問い合わせ:073-444-0472
※参拝時間・拝観料・授与所の受付時間は公式で公表されていません。
(出典:玉津島神社・鹽竈神社公式サイト)
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