埼玉県グルメ|草加せんべい・深谷ネギ・冷汁うどん
首都圏に位置しながら、豊かな農産物と独自の食文化を育んできた埼玉県は、知る人ぞ知るご当地グルメの宝庫です。パリッと香ばしい「草加せんべい」、甘くてとろける「深谷ネギ」、夏に食べたい郷土料理「冷汁(ひやしる)うどん」など、素朴ながら滋味あふれる名物が各地に根づいています。小麦の栽培が盛んだった歴史を背景に、麺類や米菓の文化が花開いた埼玉。地元で愛され続ける味を訪ねる旅は、新たな発見にあふれています。
ブランド野菜の代表・深谷ネギ
埼玉グルメを語るうえで欠かせないのが、全国に名を轟かせる深谷市のブランド野菜「深谷ネギ」です。利根川がもたらす肥沃な土壌と、昼夜の寒暖差が大きい気候のなかで育つ深谷ネギは、太くて軟らかく、加熱するととろけるような甘みが際立つのが特徴です。鍋物や焼きネギ、すき焼きなどにすると、その濃厚な甘さを存分に味わえます。冬に旬を迎える深谷ネギは、まさに埼玉が誇る冬の味覚の代表格といえるでしょう。
農林水産省「うちの郷土料理」によれば、埼玉県のネギ生産量は全国でも2番目に多い50,600トン(同省「令和2年産・作物統計(野菜)」)で、作付面積は全国でもっとも広く、ネギは埼玉県有数の地場産物のひとつです。県内でも産地によって役割が分かれており、県南東部の越谷市・吉川市・三郷市などでは夏ネギが、深谷市では冬ネギが栽培されています。
深谷では、ネギそのものの風味を味わうネギ焼きをはじめ、かき揚げや白和え、南蛮漬けなど、さまざまな料理にネギが使われます。なかでも祝い事に欠かせないのが「ねぎぬた」。やわらかく蒸したネギを、すりごまと味噌・砂糖・酢を合わせたたれであえた一皿で、甘みの強い冬ネギのとろけるような食感と酢味噌の風味がよく合います。かつて祝いの席では、ねぎぬたが出されると「もうすぐお開きですよ」という合図になったといいます。深谷市では11月23日を「深谷ねぎらいの日」と定め、花束ならぬネギの束をお世話になった人に贈るイベントも行われています。
香ばしい草加せんべいと冷汁うどん
埼玉の食文化を象徴するもうひとつの名物が「草加せんべい」です。草加市公式サイトによれば、地域団体商標「草加せんべい」を名乗れるのは、草加・八潮・川口・越谷・鳩ヶ谷で製造され、関東近県で収穫された良質のうるち米を原料に、10年以上の経験を持つ職人の管理のもと、押し瓦を使った型焼き(またはその方式を取り入れた堅焼き)で焼き上げられたもの。しょうゆの香ばしい香りとパリッとした食感が魅力です。手焼き体験ができる店もあり、観光客に人気です。また、小麦の栽培が盛んだった埼玉では、ごまと味噌、シソなどをすり鉢ですりつぶしただし汁でうどんを味わう夏の郷土料理「冷汁(ひやしる)うどん」も親しまれています。川島町や入間地域、県北などに伝わり、材料をすってすぐ食べることから「すったて」とも呼ばれます。暑い季節にさっぱりといただける、地元ならではの味わいです。
深谷のもうひとつの名物・煮ぼうとう
稲作の裏作として小麦が多く生産されていた埼玉県では、地域ごとにさまざまなうどんが生まれました。そのひとつが、深谷市を中心に食べられてきた「煮ぼうとう」です。農林水産省「うちの郷土料理」によれば、同じ料理が入間郡や比企郡では「ひもかわ」「打ち入れ」、秩父地域では「おっきりこみ」と呼ばれてきました。
いずれも共通するのは、季節の野菜を入れて煮た汁に幅広の麺をゆでずにそのまま入れ、汁にとろみをつけるという作り方。麺から出るでんぷんが汁をとろりとまとめ、体の芯まで温まります(カボチャを入れた味噌仕立ての山梨県の「ほうとう」とは別の料理です)。深谷では、名産の深谷ねぎをたっぷりと加えるのが定番。かつては囲炉裏端や鍋を家族で囲んで食べる夕食の日常食で、今も秋から冬にかけて家庭でつくられています。
深谷市では、地元出身で明治から昭和にかけて活躍した実業家・渋沢栄一が愛した料理としても知られ、市内の学校給食で提供されるほか、毎年11月11日の渋沢の命日には地元の公民館で「にぼうと会」が催されています。深谷市や秩父地域の多くの飲食店で味わえるほか、煮ぼうとう麺は土産としても販売されています。
行田のゼリーフライ
名前だけを聞くと正体がまったく分からない一品が、行田市に伝わる「ゼリーフライ」です。「フライ」「ゼリー」といっても、肉や魚を揚げたフライでも菓子のゼリーでもありません。名前の由来は小判のような形にあり、「銭(ぜに)フライ」と呼ばれていたのが変化して「ゼリーフライ」になったと言われています。
見た目は衣のついていないコロッケのようですが、中身はたっぷりのおからとジャガイモがベース。そこにニンジンやネギなどが加わります。揚げたてをウスターソースなどにさっとくぐらせるため、外はソースの香ばしさ、中はおから特有のもっちりとした食感。そのルーツは中国東北地方の「野菜まんじゅう」という料理にあり、日露戦争に従軍した行田市内の「一福茶屋」の店主が考案したと伝わります。明治後期には一般に広まり、以来ずっと行田市民のおやつとして愛されてきました。現在は市内外の学校給食に登場するほか、飲食店や精肉店でも販売され、ゼリーフライバーガーやピタサンドといった応用形も生まれています。
秩父のみそポテト
秩父地方を代表するのが「みそポテト」。「第5回埼玉B級ご当地グルメ王決定戦inちちぶ」(平成21年)で優勝したことで一躍知られるようになりましたが、もとは秩父地方に古くから伝わる郷土料理です。
平地の少ない秩父地方では古くから畑作が営まれ、収穫したジャガイモのうち小ぶりなものを囲炉裏で焼き、味噌だれを塗って食べたのが始まりだと言われています。農家では、農作業の合間に小腹を満たす軽食やおやつを「小昼飯(こぢゅうはん)」と呼び、みそポテトはその代表格でした。現在は、ゆでたジャガイモに小麦粉の衣をつけて揚げ、砂糖や酒を加えた甘辛い味噌だれをかけるのが一般的。からりとした衣とほくほくのジャガイモに甘辛い味噌が絡み、おやつにもおつまみにもおかずにもなります。秩父市がゆるキャラ「ポテくまくん」の好物に設定していることからも、地元での愛され方がうかがえます。
ベストシーズンとアクセス
深谷ネギは冬(11月〜2月頃)が旬、冷汁うどんは夏が本場の季節で、草加せんべいは通年で楽しめます。アクセスは、深谷ネギの本場へはJR高崎線「深谷駅」、草加せんべいは東武スカイツリーラインの駅などが便利です。川越の小江戸散策など、埼玉の観光とあわせてご当地グルメを巡るのもおすすめ。首都圏からの日帰りでも気軽に味わえる、埼玉自慢の素朴で滋味あふれる味覚を楽しんでみてください。
訪問の実用情報
- 草加せんべいの認定基準:草加市公式サイトによると、地域団体商標「草加せんべい」を名乗れるのは、(1)草加・八潮・川口・越谷・鳩ヶ谷で製造され、(2)関東近県で収穫された良質のうるち米を原料とし、(3)最低10年の経験を持つ職人の管理のもと、(4)押し瓦での型焼き、または押し瓦方式を取り入れた堅焼きで焼き上げられたもの、と定められています。
- 草加せんべいの歴史:江戸時代に保存食として発展し、最初は塩を練り込んだもので、幕末から醤油が塗られるようになりました。大正時代に天皇への献上により認知度が高まり、地場産業として確立しました。
- 冷汁うどん(すったて):農林水産省「うちの郷土料理」に埼玉県の郷土料理として掲載。主な伝承地域は川島町、入間地域、県北。夏の農作業の合間に食べられてきた料理で、手間がかからず栄養もあることから農繁期に重宝されました。「すったて」の名は、材料をすり鉢ですった「すりたて」を食べることに由来します。
- 注意点(アレルギー):うどんの小麦、せんべいの醤油に含まれる小麦・大豆、冷汁のごま・味噌(大豆)に注意が必要です。小麦は消費者庁が表示を義務づける「特定原材料」の一つです。
※手焼き体験や個店の営業時間・料金は店舗により異なるため、各店へ直接ご確認ください。
(出典:草加市役所公式サイト「草加せんべいの歴史と現在」、農林水産省「うちの郷土料理」冷や汁/すったて(埼玉県)、消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」)
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