那智の扇祭り|扇神輿と大松明の見どころと日程【和歌山】
和歌山県那智勝浦町の熊野那智大社で、毎年7月14日に行われる例大祭が那智の扇祭りです。正式には扇会式法会と呼ばれ、熊野十二所権現を表す12体の扇神輿が本殿を出て、那智の大滝へと渡御します。その道筋を清めるのが、燃えさかる12本の大松明。石段いっぱいに火の粉が舞い上がる光景から「那智の火祭」の名でも広く知られ、2015年3月2日に国の重要無形民俗文化財に指定されました。滝と火と扇が交わる、熊野信仰の核心にふれる一日です。
12体の扇神輿が滝へ向かう
午後1時、御本社を出発した扇神輿が参道を下りはじめます。高さはおよそ6メートル、幅は1メートルほど。細長い板に白銅鏡や光、蝶の髭、檜扇の花といった飾りが取り付けられ、夏の日差しを受けて金色にきらめきます。12体という数は熊野十二所権現を表し、縦に長い形そのものが那智の大滝の姿をかたどるとされています。
担ぎ手が肩を入れて立ち上がると、扇神輿はゆっくりと揺れながら木立の間を進みます。杉木立の下は昼でも薄暗く、そこへ差し込む光と扇の輝きが重なる瞬間は、写真では伝わりにくい荘厳さがあります。見上げるほどの高さのものが人の肩だけで運ばれていくという、素朴で力強い光景です。
大松明が石段を埋める御火行事
午後2時、祭りは最大の山場である御火行事を迎えます。12本の大松明に火が入り、扇神輿を迎えに石段を上っていくのです。松明の重さは、第1の大松が最も重くおよそ50キロ、第12の大松でもおよそ25キロ。担ぎ手は白装束姿で、燃えさかる炎を肩に載せて石段を往復します。
火の粉は頭上に散り、松明が焼ける煙のにおいがあたり一面に立ちこめます。担ぎ手の掛け声、見物人のどよめき、蝉の声が混ざり合い、参道は熱気に包まれます。この炎で道を清めてから、扇神輿は飛瀧神社の御瀧本へと進みます。落差のある滝の水しぶきと、燃える松明の火。相反するふたつが同じ場所で出会うところに、この祭りの真骨頂があります。
朝から続く神事と那智田楽
扇祭りは火だけの祭りではありません。当日は午前10時の御本社大前の儀に始まり、11時に大和舞の奉納、11時30分にはユネスコ無形文化遺産の那智田楽、12時15分に御田植式と、朝から神事が連続します。御火行事のあとも、扇褒神事、御瀧本大前の儀、御田刈式と那瀑舞が続き、午後3時30分の扇神輿還御祭で一日が締めくくられます。
熊野那智大社では、仁徳天皇5年(317年)に那智山へ社殿が造営されたと伝え、この祭りは御遷宮と御鎮座をしのび、神霊を振い起こして万物の生成発展を祈る神事とされています。火の迫力に目を奪われがちですが、田楽や御田植式など農耕にまつわる所作が組み込まれている点も見逃せません。
楽しみ方のコツ
御火行事は午後2時前後の短い時間に集中するため、正午までには境内に入っておきたいところです。参道の石段は幅が限られ、当日は大変な人出になります。炎に近い場所は熱と火の粉が届くので、化学繊維より綿の衣類のほうが安心です。帽子、飲み物、汗をふくタオルは必携。石段の上り下りが続くので、履き慣れた靴で出かけてください。
午前の神事は比較的落ち着いて見られるので、小さな子ども連れや足に不安のある方は、大和舞や那智田楽を目当てに早めに訪れ、御火行事は少し離れた位置から眺めるという組み立てが無理がありません。祭りのあとは那智の滝をあらためて訪ね、火が去った静けさの中で滝と向き合うのもおすすめです。
アクセス
最寄り駅はJR紀勢本線の紀伊勝浦駅で、熊野御坊南海バスで「那智山」バス停まで約30分です。祭り当日はバスの乗降が「那智山」バス停のみに限られ、熊野御坊南海バスによる無料シャトルバスも運行されます。車の場合、熊野那智大社の駐車場は社務所下に30台で、神社防災道路の通行料800円が必要です。例年10時30分ごろには満車となり、そのあとは臨時駐車場へ誘導されます。当日は公共交通の利用が確実です。
祭りの実用情報
- 開催時期:毎年7月14日
- 会場:熊野那智大社・飛瀧神社(〒649-5301 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1)
- 主催・問い合わせ:熊野那智大社 0735-55-0321
- アクセス:JR紀伊勝浦駅から熊野御坊南海バス「那智山」下車(約30分)。当日は無料シャトルバスあり
- 駐車場:社務所下に30台(神社防災道路通行料800円)。例年10時30分ごろ満車、以降は臨時駐車場へ
- 料金:観覧無料
- 公式サイト:https://kumanonachitaisha.or.jp/
※日程・内容・料金は変更される場合があります。おでかけ前に公式サイトで最新情報をご確認ください。
(出典:熊野那智大社公式サイト、熊野三山協議会公式サイト、和歌山県公式観光サイト、文化遺産オンライン(文化庁))
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